毎日新聞 2024、2 、6 掲載
支えられ生きる
3歳の時ポリオ(小児マヒ)にかかった。不自由になった脚で歩き、80年になる。医師から「歩けるのは50歳くらいまで」と診断を受けていた。
30年もおまけがついたが、艱難辛苦の人生だった。
「どんなことがあってもくじけたりしたらあかん」
母の一言に支えられ、ここまできた。
その脚も数年前から衰えを感じ、そこに病気が重なるように増えてきた。
最近まで行けていた駅や店などにいくのが難しくなり、日常動作にも支障が出てきた。どうすることもできず、歯がゆい思いが募る。
近くに住む娘が「介護保険の手続きをしよう」と言ってきた。
介護認定が下りてから、静かだった一人暮らしの部屋に急に医療・介護関係者の訪問が増え、おしゃべり回数も多くなった。
私の障害の変化や医療・介護関係者の仕事ぶりを見て思うところがあったのか
娘は社会福祉士の国家資格に挑むことにしたらしい。
合格を願っているが、本人次第だ。
娘と暮らす、美容師の孫娘からラインで「じいちゃん散髪するよー」
と連絡があり、介護認定を受けた電動車いすで娘の家に行くことにした。
二人の手を借り、家の中へ。丸狩りの散髪は10分で終了したが、
孫娘に散髪してもらう幸せを感じた。
家族や医療・介護従事者の皆さんに助けられ、
残りの人生を少しでも楽しく、心地よく過ごしたい。