1人暮らし

2021年3月7日 毎日新聞 掲

1人暮らし

毎朝5時には起床する。冬場でも湯を使わず水で洗顔する。

シャキッとしたところで身支度を整え、妻の写真に水を供え、線香をたく。

「よし今日も頑張るぞ」と声をかける。

ベランダに出て大きく深呼吸をしながら、一日の無事を祈る。そして、抱えている病気の進行を少しでも遅らせるために、自己流のストレッチを毎朝30分くらいやる。

「おーい、朝ご飯できたか」。叫びたくなるが、自分でやるしかない。1人暮らしだ。

炊事や洗濯、買い物、掃除などは習慣で動いているが、ときにはおっくうだと感じることもある。でも、人間は動かないとダメになることも承知している。

いつもなら天気のいい日は、ビタミンDをつくるため公園に行ってひなたぼっこをするが、今日は娘が住む家の庭で枕木の敷設工事をやることになり、見守りに行った。

私は前日に材料の段取りをしておいた。実働部隊は大学3年生と高校一年生の孫だ。作業方法を少し説明しただけなのに理解してくれ、孫たちは造園師のまねごとをするように土をならし、砂利をまき、水平器で位置を整え、枕木を設置していく。最後は化粧土で仕上げた。

娘は枕木の配置を考え、アクセントになる花々をサイドに植えた。

チームの共同作業で庭に10mのプロムナードが完成。

1人暮らしもたまに楽しいときはある。